
劇場予告編を見て気になりつつも、いまいちどんな内容の映画なのかつかめなかったんですが、見終わってナルホドと納得。これは予告で伝えるのは非常に難しいだろうなぁと感じました。
一般的なドンパチ系の戦争映画ではなく、湾岸戦争の中におかれた兵士達の青春群像といった感じですか。ハイテク戦争の時代にひたすら訓練にあけくれる退屈な毎日の中で、最初は仮病を使うほど嫌がってた主人公がやがて実践を待ち焦がれるまでに成長?するというストーリー。
これまでの戦争映画というとやはりベトナム戦争や世界大戦などがメジャーですから、湾岸戦争というだけでかなりリアル。でも、私達が平凡な日々を送ってた時の彼らの実像を垣間見ることはできますが、平和ボケ日本人だからなのでしょうか、結局他人事といった感覚は最後まで抜けませんでした。野営地でバカ騒ぎをするアメリカ兵たちを遠巻きに見つめるこの疎外感・・・。
全体的にこれといった大きな盛り上がりもなく、淡々と退屈な訓練の日常が流れていく映画なんですが、退屈なりにも色んなエピソードが詰め込まれていたり展開もめまぐるしいので飽きることなく観ることはできました。ていうか、けっこう楽しみました。下品な下ネタ・汚物ネタ満載ですが、けっこう好きだったり(笑)ただ、この手の映画は一般層には受けないんでしょうねー。私を含めお客さんは全部で4人・・・。男2、女2全員お一人様での鑑賞です。けっこう小ネタが散りばめられててクスッっとなるシーンが多いんですが、この環境ではあんまり笑えない・・・。
小ネタというかけっこうな部分で影響を受けてるというかベースになってると思われる「フルメタル・ジャケット」や「ディア・ハンター」そして「地獄の黙示録」どれも戦争映画として名作ですし大好きなので、比較しつつ鑑賞できたのも面白かったところです。ただしディア・ハンターと黙示録は効果的に映画の中で使われてるのに対しフルメタルは効果がやや落ちるかな。なにせ巨匠キューブリックの偉大な作品に勝てるはずもないので、まんま似たようなシーンにしてしまっただけという感覚が。オマージュといえばそうなのかもしれませんが、絵面を同じにしただけで中味がなさすぎというか。あっ、これってわざとタイトルとかけてあるのかなぁ(笑)ちなみにフルメタルを観たことがある人はエンドロールも最後まできちんと観ましょー(^^)
音楽。予告編で一回聴くとしばらく頭の中をグルグルしてしまうあの「ボン、ボン、ボン、ボボボン」はきちっとエンディングで流れてましたが、それ以外にも本編でありとあらゆる良い曲が流れてました。T-REXなんて久々に聴いたけどやっぱりいいわぁ・・・と映画そっちのけで聞き入ってしまったほど。さすがにTHE ENDじゃなかったけどドアーズの曲も流れたし。こういう部分からもやっぱり青春映画なんだなぁって感じますね。
俳優。主役のギレンホールは顔は濃いけど無味無臭というか、ある意味現代の若者っぽくもあり適役。ただ、かなり捨て身の体当たり演技だったわりに印象は薄い。丸刈り兵士ばかりの中、その他大勢の兵士を見分けるのはさぞ大変だろうと製作側が気を使ってくれたのか、わりと粒ぞろいでそれぞれ個性が光る脇役たち。特に
フライトプランにも出てたサースガードは物凄く光ってましたねー。フライトプランではちょっと作品の空気とともに一緒に沈没してしまった感がありましたが、こちらではとてもいい。主役の隣でちょっと陰のある役が物凄く似合う?
全体の構成はやや散漫な印象を受けましたが、映像がとても良かった。まぶしいほどの砂漠を描いたかと思いきや油田炎上のあやしい赤さの場面があったり、屋内も若い男子であふれる異様な空気がよく出ていました。俳優にあたる太陽光や炎、人工灯にいたるまで、光の当て方もセンスいいな~と思いました。特に気に入ったのはスナイパーの2人が出陣した後の大空爆シーン。窓ガラスに映る爆撃シーンがとても印象的でした。よく見るとちょっとチャチっぽくも感じそうなのでごまかしの意味もあるのかもしれません(笑)
終わり方も淡々としていましたが、凱旋のバスのシーンはこの映画の中でもっともいいなと思いました。あのシーンが観られただけで満足度がぎゅぎゅーんとアップ。
鑑賞した劇場では来週で打ち切りらしくちょっと残念。ここで1日1回のみの上映になってしまうことはよくありますが、バッサリ打ち切りってけっこう珍しい・・・。
柏ステーションシアターにて。
ジャーヘッド
JARHEAD
2005年 アメリカ
監督:サム・メンデス
出演:ジェイク・ギレンホール、ピーター・サースガード、ジェイミー・フォックス、クリス・クーパー、ルーカス・ブラック