歴史に名を残す偉大な聖人、マザー・テレサの生涯を淡々と綴った映画。
天に召されるまでの約50年を2時間で語るだけあって、展開がめまぐるしくてやや強引なところも感じられましたが、彼女の生涯をざっと知るにはちょうどいい作品だと思います。
本などを読みこんでてかなり詳しい人にとってはやや物足りないかも。
主演はオリビア・ハッセー。古典的名作「ロミオとジュリエット」の、というよりは、布施明の元夫人といった方がピンと来る人が多いでしょうかね(^^;
マザーの30歳代から晩年の80歳代まで違和感なく演じておりました。相変わらずお綺麗です。
か弱い一人の女性なのに凛とした芯の強さが一本通ったマザー像が上手く出ていました。
神の教えに従ってインドの最も貧しい人たちのために献身的にその身を捧げる姿は、宗教の違いや価値観を超えて心に響きます。
とは言っても映画ではどちらかと言えばマザーの内面が描かれており、当時のインドの悲惨さとか混乱状態などはちょっと押さえ気味だったように思います。
そのせいもあってか、思ってたより涙涙・・・といった感じではなく、本当に淡々としたもんです。おそらく後から後からジワっとくる類の映画なんでしょうね。
私がこの映画でグっときたのは二箇所ほど。
冒頭のマザーが登場するシーン。あまりの神々しさに静かな感動。
そしてもう一つはノーベル平和賞をもらって壇上で演説をするシーン。
非常に重みのある言葉とともに当時のニュース映像が重なり、あらためてこみ上げてくるものがありました。
彼女だってあくまでも一人の生身の人間なんですが、その行動はやはり聖人と言われるにふさわしいものだと思います。
以前テレビ番組(ふしぎ発見だったような気が)で見たマザー特集で驚いたのが、遺品のあまりの少なさ。
この飽食の時代に、よくぞそんなに所有欲にとらわれずにいられるものかと。そりゃ人は死んだら何もかも終わりですけどね。でもやっぱりアレやコレや欲しいものがあったり、やりたいことがあったりするじゃないですか。
マザー的には死は神の元へ行けるという意味なのかな。映画では周囲の人から働きすぎを心配された時、今休まなくても永遠の休息が待っているから、と言ってましたっけ。
ロビーでパンフレットの他に物凄く色んな種類の本がありましたが、飛ぶように売れてました。
現代の日本でマザーの言葉に救われる人もたくさんいるんでしょうね。
私はというとエンディングロール中に、この映画を観るお金で貧しい人が救われるのかな・・・なんてチラっと考えてしまいました。考えるだけで終わってしまうのがブルーになったり。
日比谷シャンテ・シネにて
マザー・テレサ
MOTHER TERESA
2003年 イタリア・イギリス
監督:ファブリッツィオ・コスタ
主演:オリビア・ハッセー、ミハエル・メンドル、セバスチャーノ・ソマ